現在母が住んでいる私の実家は、結構な田舎です。
何をするにも車が必要な感じで、一家に1台どころか1人1台のよくある感じなので、母も若い頃から軽自動車を足代わりにしていました。
2018年の夏に病院でアルツハイマー型の認知症と認められた母ですが、まだだいぶ軽度だったことと、折り悪く一番近くにあったスーパーが店をたたんでしまって食品や日用品を買うのも不便だろう。
と見て見ぬふりをしていました。
が、親戚や友人知人、東京での仕事仲間なんかにも「車はまずいから早めにやめさせたほうがいい」と言われ続け、やはり車はやめてもらうことにしました。
特に子持ちの人に「認知症の人がブレーキとアクセルを間違えて子供をひかれたりしたら親族を恨んでも恨みきれない」と言われ、こんな無責任な話はないなと思い、車をやめさせることに踏み切りました。
これが年が明けた2019年の頭のことで、帰省した時に切り出しました。
この帰省は1週間程の滞在となりましたが、その間毎日のように
「もう歳だしそろそろ危ないから車を辞めよう」
と言い続けました。
買い物などは確かに大変になりますが、食料品はネットスーパーで私が注文すればいいし、日用雑貨は私が帰ってきた時に買いだめすればいいからと、何度も言い聞かせました。
母はなんとなくですが、もう車の運転はやめなければいけないと分かっていたようで
「そうね、必要な時はタクシーでも使ってやっていこうかね。そして車の無い生活になれていかないとね。」
と言って最後にはなんとか納得してくれました。
急には廃車の手続きは無理なので、この時は車を隠して東京に帰ってきたのですが、母はやはり車がなくなってよっぽど不便なのか、ショックなのか…
ずっと車を足代わりにしてきた人にとって、車が無くなるというのは人として終わった感じがするのはなんとなく理解できますので、若干後ろめたい気はしていましたが、東京に帰った次の日、仕事中に母から電話がかかってきました。
話は案の定車のことでした。
一度は納得してくれたはずなのに
「車を隠した!」
「車をどこへやった!!」
と、徐々に語気が荒くなり、あげくの果てに
「もう知らない!あんたなんかとは縁を切る!!」
と叫んで電話を切られてしまいました…
車に乗るのはやめようね、と話をして納得してくれたのに忘れてしまったのか、
仕事中だと言ったのにまくしたてるほどにキレてしまったのも認知症の症状なのか、
母は元々口うるさいほうではありましたが、こんなキレ方をするような人ではありませんでした。
この時一緒に作業していた親方であるシャチョーにも心配されつつ仕事を終え、トホトボと帰宅してこの日は終わったのですが、どうしたものか…
と、自宅でグッタリしていると、元バンド仲間のK氏から電話がかかってきました。
この人は一緒に上京してきた人で、今も色々一緒に仕事をやったりと、なんやかんやと深い仲の人です。
母の認知症のことも一番最初に言ったので状況はわかっていて、心配してくれているのですが…
そんなK氏が仕事のことで電話をかけてきたのですが、電話に出た私の声があまりに元気がなかったからか、本題に入る前に「どした?何かあった?」と言ってきたので、今日あったことを伝えました。
すると
「故障して修理に出したことにすれば?」
と言ってきました。
それもありか、と思って試しにそのまま母に伝えると
「それなら仕方ないね」
と、納得してくれました。
こんな子供騙しのような理由が通用するのも認知症の症状なのかもしれませんね。
3月の帰省の時には廃車の手続きをしなければ…
と心に決めて、この時は丸く収まりましたが、1ヶ月後にまた「車をどこへやった!」と電話がかかってきまして…
ほとほと困ったものです。